読書録─『機械どもの荒野』 | 無名戦士の黒い銃

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読書録─『機械どもの荒野』

読書録─『機械どもの荒野(メタルダム)』森岡浩之/ハヤカワ文庫


銃


『星界』シリーズの森岡作品。登場人物の皮肉じみたやりとりはあいかわらずの森岡節だが、
全体にやや精彩に欠ける雰囲気か。
 本作は『星界』シリーズとはちがって、オトナたちが主人公をはっているが、どうも中途半端というか、つきぬけていない。正義感にあふれているわけでもなく、かといって悪党でもない。いきあたりばったりで目的意識が全体に希薄だし、爽快感にも欠ける。
 それが大人の物語だと強弁することも可能なんだろうが、舞台設定とか世界観とか作品全体の雰囲気が“大人の物語”にマッチしていないというか。物語展開もどこかしら牧歌的な雰囲気が見え隠れしていて緊張感やハードさがたりない。
 ジントとラフィールが主人公であるならば、特に問題はないのだけれど。
 だいたい、もともとはソノラマから出た作品らしいので、大人の物語はあまり想定されていないのかもしれないが、ならばもっと爽快感がほしいところ。

 ただ、まあ、不可もない。リーダビリティは決して低くないし、この作者特有の“牧歌的に皮肉な”雰囲気は読んでいて思わずにやりとさせられる。小ぢんまりとまとまった小品といったところかな。






 いつもよりは細かくないが、いちおうあらすじ。細かくないといっても相対的な話なので、当然ネタバレ注意。





・機械文明と人類との蜜月の終焉を迎えた荒野で、機械ハンターのタケルは、喋るスナークと出会う。
 いにしえの、機械の“叛乱”以降、人間と機械の関係は狩り、狩られるのみとなってしまった世界で、このスナークはタケルに提案をしようとする。
 タケルはかまわず売却するためスナークの機体を解体するが、頭脳だけ残されたスナーク“チャル”から得た情報によると、機械の“母”であるアディティが人間との共存を望んでいるらしい。
 だがそのためには人間の殲滅を目的としてアディティを封印しているヴァルナ・システムの機能を停め、アディティの許へとたどりつく必要があるというのだ。

 花屋志望の整備士であるカーシャ、電脳技師の鴉を否応なしにまきこみ、なしくずし的にヴァルナの本拠地へと突入したタケルは、<以下ネタバレにつき白字>からくも敵の機能を不全に追いこむことに成功する。
 だが復活したアディティの語る真相はおそるべきものだった。
 かつての機械の“叛乱”は、人口増加が原因で滅亡への途をひた走る人類を“間引き”するためにアディティ自身が仕組んだことであり、その目的が達成された後もヴァルナ・システムの人類殺戮が続いていたのは、単に自己防衛システムの暴走に過ぎなかったというのだ。

 三人はアディティの破壊を計画し、それを達成する。
 が、アディティは人類の滅亡への予感とタケルたちとの死別に涙しながら
<以上ネタバレ>消えていくのであった。






 物語の終わりかたは、人類の復権を斜にかまえてながめつつ、一匹狼気質の自分が英雄として権力を握る気力も能力も持たないと自覚するタケルが、“花屋開業のために珍しい植物を”荒野へさがしにいくというカーシャに、鴉とともに同行するという、まあなんとなく中途半端なハッピーエンドである。

 アディティの<以下ネタバレにつき白字>行為は人類“全体”への善意から出たもの、アディティの復活によって急速に存在感を縮小させていったチャル、タケルたちの計略にのせられてアディティを“獲物”として襲撃し略奪するハンターたち、善意の人類の守護者として慫慂と、なおかつ淡々と消滅していくアディティと、それを見送るタケルたちの<以上ネタバレ>なんともいえない中途半端な後悔漂う終盤。

 森岡浩之というひとは、基本的に人間の善意を信じている、というか、あまり激しい悪意や狂気をまとった人物を配さない傾向があるように思う。この作品は、その傾向が悪い形で具現化している。結果として、何もかも中途半端で、読後感もどうにも中途半端だ。

『星界』シリーズは、この中途半端感がよい塩梅で作品を支配して、みごとな味になっているイメージがある。なんとも奇妙な話ではあるなあ。

 ついでにいうと、イラストもなんとなく中途半端。アニメ絵っぽい感じだが、アニメ絵になり切れていないというか。そういえば、タイトルもなんとなく中途半端だな。中途半端に徹したのだろうか。んなこたないか。

 まあ、徹する意味もないけどね。




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※文中の画像はAmazon等へのアフィリエイトリンクが含まれます。
※この記事は2009年09月13日 10時34分07秒アメブロに投稿した記事のバックアップです
 またこちらへの転載に伴い、アメブロおよびBloggerに掲載した元記事は削除いたしました。

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