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読書録─『神狩り』

読書録─『神狩り』山田正紀/角川文庫




神



《「私は、かつて神学者だった」/と芳村老人は言った。まるで、彼が今語っているのは、とるに足りないことだ、とでも言わんばかりの口調だった。/「そして、神学者だった私が、気も狂わんばかりに悩まされた一節が、マルコ福音書のなかにある──<われわれと共にいる神は、われらを見捨てる神>というのが、それだ。戦争中だったからね。ノアの洪水や、ソドムの都を考えるまでもなく、まさにわれわれは見捨てられていた訳だ」》(p.89)



 山田正紀のデビュー作をBookOffにて入手。

『神狩り2』も出ているらしいので、ひさしぶりに再読だ。この作品も、印象的なネタあかしの部分以外は

まったくといっていいほど内容を覚えていなかったし、やっぱりあらすじを記載。ネタバレ注意ね。





・若手の天才情報工学者島津は、ある作家の依頼で謎の<古代文字>解読のためにある工事現場で発見された弥生時代の石室を訪れる。だがその矢先、石室の落盤に遭い作家は死亡。島津は意識を失う寸前、謎の男から古代文字から手をひくように強く警告を受けるのだった。

 怪我はなかったものの、彼の才能とコネを駆使した急激な出世および性格の偏向から妬まれていた島津は、とりかかっていた機械翻訳の仕事も同僚に奪われ、謹慎同然の状態に陥る。作家ののこした写真をもとに<古代文字>の解読にかかるが、大学にある連想コンピュータを使用できないことが大きな障害となっていた。そんなおり、大企業の及川と名乗る男から、コンピュータを自由にしてよいという胡散臭い申し出を受けたのだった。

 呼び出しに応じた島津だったが、睡眠薬入りのコーヒーで昏倒させられ、窓ひとつない施設で監禁同然の状態で解読を強要される。及川はどこかの情報機関の人間らしく、彼の他に宗と名乗る不気味な青年も島津の作業を見守っていた。

 島津は古代文字が、元来、論理記号を5つ必要とする人間の思考能力では創出不可能な、論理記号2つのみで構成される奇怪な言語であり、従来の人間の言語と合致する部分もひとつもないことを告げ、これは神の言語であると断定するが、及川ら情報部の人間も宗も、それを当然の前提と受け入れている様子だった。

 解読に進展の見られぬまま、就寝中の島津のもとに謎の女が姿を現す。誰何し、逃げる女を急いで追うが、幻のように姿を消してしまう。そしてかわりのように、島津は、ドイツの秘密機関オデッサの人間と思われる男が、及川の手によって拷問にかけられている光景を目撃した。その男の告白によると、石室の崩落の際に島津に謎の警告を残していった男は、アーサー・ジャクスンというらしい。

 翌日、突然及川から作業の終了を告げられる。提示された50万円の小切手には手をつけず、米軍基地とおぼしき施設から立ち去ろうとする島津を、宗が呼びとめる。宗は及川とは別のグループに属しており、改めて島津に解読を依頼したいという。

 宗につれられていった<理亜(ユリア)>というバーには、店の名と同じ名前の女がいた。あの夜、島津の監禁されていた部屋を訪れ、幻のように消えていった女だと島津は直感するが、女はそれを否定する。

 芳村と名乗る老人との問答で、島津は古代文字が、まさしく神の文字であることを認めないわけにはいかなくなっていく。老人によると、イエスという男は神に叛逆した天才であったが、神の策略によって神の側にとりこまれてしまった人物なのだという。

 神は人類に自分の存在をほのめかすような証拠を残してはとりあげることを繰り返してきた。神には人間に対する悪意がみちあふれており、人間が神に関わろうとして過酷な運命に翻弄される姿を嘲弄しているのではないかというのだ。

 そして芳村たちは、そんな神に敵対すべく活動しているのだという。最初に島津に文字の解読を依頼してきた作家もまた芳村老人のさしがねであり、宗の父親はそんな芳村の活動に資金を提供してきた華僑の大物だったのだが、先年、何の前触れもなく死亡してしまったらしい。そしてそれは理亜によれば、神に殺されたのだという。

 理亜自身は、かねてから超常能力を発現させており、かつては神の預言者として活動していたのだが、あるとき神にいわれもなく犯され、精神の均衡を失いかけていたところを芳村老人に救われたらしい。理亜が、神に選ばれたと感じず暴行を受けたと看破したのは、彼女の能力がそれだけ強かったからだという。

 そしてアーサー・ジャクスンは理亜と同じく超常能力をもっているが、なぜか古代文字を隠蔽してまわっており、及川やオデッサは神にとりいろうとしている一派、ということらしい。

 古代文字を解読することで“神狩り”に参加することを決意した島津だが、その矢先、米軍基地で暴動が発生し、その余波のように、島津が監禁されていた“研究所”が爆破されたことを知る。唯一生き残った及川がジャクスン襲撃に島津たちを誘う。だが及川は返り討ちにあって死に、ジャクスンは妬む神こそ神の本質と説き、神と関わればすべて悲惨な運命が待つと警告する。そして芳村老人に、神との対面を提案する。島津と宗の制止をもきかず、芳村老人はジャクスンに同行するのだった。

 残された二人は及川の死体を始末し、夜が明けてから<理亜>に戻ったのだが、半狂乱で泣き叫ぶ理亜と、その腕の中で息絶えた芳村老人に直面するのだった。今朝未明に理亜の腕に倒れこむように帰還したまま、事切れたのだという。ジャクスンの残した一枚のメモには、老人が勇敢にも神に戦いを挑み、敗れたことが記されていた。理亜を慮り神狩りから手を引くことにした宗は、島津に理亜を託して、理亜と自分のパスポートを用意するために店をあとにした。が、なりゆきから理亜に拒絶された島津が、距離をおくために部屋を出ていたあいだに、理亜は服毒自殺をとげてしまう。

 何もかもなくした島津と宗は<古代文字>解読にとりかかる。連想コンピュータの使用をかつての婚約者の父親である教授に申し出るが当然のごとく使用許可はおりなかったため、偽情報で学生を踊らせ、大学を占拠させることに成功した。

 学生と機動隊とのにらみあいも限界に近づき、撤退せざるを得なくなりそうなタイミングで、それまで沈黙を保っていた連想コンピュータが結果らしきものを出しはじめる。だが同時に闘争の火蓋も切って落とされ、宗が機動隊の銃弾を受けたために島津は脱出を余儀なくされる。

 だが脱出の途上で宗もまた息をひときり、島津は神との戦いの決意を新たにするが学園占拠の黒幕として指名手配されたまま、連想コンピュータを使用する機会をうかがい潜伏し、やがて一年の月日が流れた。ふと、理亜のような霊能力者の協力をあおごうと思い立ったのだが、なぜか霊感能者は行く先々でことごとく姿を消しはじめていた。しかも、その理由は、理亜に呼び出されたからだという。

火星

 理亜の死を確かめるように横浜の墓地を訪れた帰路、警官の誰何を受けた島津だったが、突如現れた猛スピードで疾走する赤いスポーツカーに危機を救われる。島津の危機を救ったのは、理亜の親友だった啓子という霊感能者で、島津は利亜の霊に守られ、導かれているのだと告げる。そして啓子に憑依した理亜と一夜を過ごした翌朝、啓子にかかってきた電話に<以下ネタバレにつき白字>出ると、理亜をかたる女性の声が一方的にかつてのアジトであったバー<理亜>へと呼び出しをかけてきたのだった。

 霊感能者たちが大量に集まるバーに赴き奥へと踏み入る島津を、NASAの脇田と名乗る男が迎える。脇田は神と戦うために霊感能者を集めているのだと告げ、理亜の名をかたったのは島津を呼びよせるためだったと伝える。

 そして脇田から見せられた写真には、確かにあの古代文字らしきものが写し出されていたのだが、その写真が実は火星の運河を写したものだと告げられ驚愕する。突然のボルターガイストが店を襲う。写真を目にした瞬間の襲撃に、人類の右往左往する姿を見て楽しんでいたはずの神が焦っているのではないかと推測する島津。

 アメリカの片田舎にアーサー・ジャクスンがいるとの情報を受けた島津は、NASAの協力のもとに彼を訪問し、火星の<古代文字>が警告であることを告げる。NASAのみならずソ連の宇宙計画もまた火星への探索が全く理由不明なまま幾度となく頓挫しているのだ。まるで、何者かが人類の火星到着を妨害してでもいるかのように。

 人類が火星に降り立つことで、存在の論理レベルがあがるのではないか、神はそれを恐れているのではないか? 島津の言葉にジャクスンは信じていた神の絶対性を突き崩されて動揺し、感能力で島津を殺そうとするが、複数の能力者がそれを抑え、島津はジャクスンを射殺
<以上ネタバレ>するのだった。<あらすじ以上>





 山田正紀の作品には、どこかに何か目新しい学説のようなものがあり、それが物語の核となっていることがよくあると思う。この作品においては、論理レベルとかそのあたりがそれだ。なんだか歯切れが悪いな。おれは頭が悪いから、よく理解できない、というか、理解を放棄して、なんとなく“そういうもの”として読み進めてしまっているので。

 ただ、山田正紀作品に限っていえば、そういう読み進めかたで正しいのではないか、と何となく勝手に思っている。つまり、わたくし的にはまったく問題なし。

 山田作品はおもしろさが激烈で、本書も夢中になって読了した記憶があるのだが、今回再読してみると、それほどでもなかったかもしれない。いや、もちろん面白かったのだけれど、激烈というには至らないというか。山田正紀作品に対する耐性ができてしまったのではないかと、そういう感じかも。歯切れが悪いな。





 で、山田正紀作品のもうひとつの特徴が、登場人物がなんだかイヤなヤツばかりで、まともな人間がどこにもいないということ。これは登場人物の書きわけにもなっており、しゃべりかたとか性格とか行動とかが尋常でなかったりクセがありすぎたり、とにかくどこかまともではない。そして、特殊能力を持っていたり知識やら何やらに秀でていたりするがどこかイビツで、しかもたいていの場合自虐的。人間のクズみたいに自分のことを位置づけている主人公がやけに多いと思う。で、厭世的。

 本書の島津も、出世のために教授の娘と婚約したりしてるし、同僚には冷たい、というより人間的な感情を全く抱いていないし、きらっているし、きらわれている。宗や理亜とはそれなりに絆めいたものを感じている部分もあるが、悲惨な別れかたになっている。芳村老人が唯一まともといえばまとも──でもないかもしれないが、人間的にはよい部類に入る。でも神への反抗という大きな執着に、自滅する。もっとも、望んでのことではあるし、悲劇的なその死も、本人にとっては本望に近いのではないかといった感はある。

 山田正紀作品の登場人物は大部分が悲惨な死に方をする。本書も例外ではなく、生き残ったのは島津と終盤に出てきたNASAの人くらいか。ただ、本書の結末においては、島津の行く末にさほど悲惨さは感じられない。むしろ希望めいたものすら(島津への希望ではなく、人類への希望ではあるが)感じられて、このあたりがやや山田正紀作品らしからぬといえばらしからぬが、さて、果たして『神狩り2』ではこれがどうなっているのやら。もっとも、単行本でしか出ていないようなので、読む機会があるかどうかは怪しいんだがね。





 再読して初めて思ったのだが、どうも人類が火星に降り立つことで階梯があがる、という結論、というか結末はなんだか唐突な感じ。このへんも、『神狩り2』どう処理されてるのかは興味があるところなんだけどねえ。


『神狩り』Amazonリンク↓





※この記事は2009-10-10 18:24:22にアメブロに投稿した記事を移転したものです。

なお、移転元の記事は削除済です。










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