読書録─『造物主(ライフメーカー)の掟』 | 無名戦士の黒い銃

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読書録─『造物主(ライフメーカー)の掟』

読書録─『造物主(ライフメーカー)の掟』J・P・ホーガン/創元推理文庫



タイタン


 さて、『マルチプレックス・マン』につづくホーガン初読の2冊目であります。

『マルチプレックス・マン』もそうだったけど、この本も最初のあたりをクリアできれば至極読みやすくひどくおもしろし。

 では恒例のあらすじから。無論ネタバレ注意。



・異星の自動工場宇宙船が百万年前に故障のためタイタンに着陸し、そこに自動工場を建設しはじめた。新星の影響で機能不全をきたした工場は、数多の突然変異ロボットを生み出し、歪んだ進化がタイタンを覆う。

 21世紀、偽心霊術師のザンベンドルフは宇宙空間におけるテレパシー実験のために火星に向かう一団に加わるが、NASOのコンロンはペテン師の反科学活動を白日のもとにさらすべく、認知心理学者兼奇術師であり超能力ハンターと自他共に認めるマッシーを同火星調査団に派遣した。

 そのころ、タイタンでは地球西洋の中世さながらの世界に発展した機械生物たちの国クロアキシア王国において聖職者会議が開かれ、大地が球形であると主張するロフバイエルへの異端審問が行われていた。彼の親友サーグの機転により辛くもロフバイエルは溶解刑を免れたが、そのためにサーグまでもが聖職者や権力者たちににらまれ、標的とされてしまう。

 ザンベンドルフ、マッシーを含んだ一行は火星へ向けて出航する。が、ザンベンドルフはさまざまな手がかりから、船の目的地が火星ではなくタイタンであることを察知し、マッシーによって公開放送の場で追い詰められた彼は“奇跡”を体現するためにそのことを暴露してしまう。上層部はザンベンドルフの“洞察”を認め、自由主義社会の利益を保つために極秘裏に計画を進めていた旨を告げ、希望者にはタイタン行きをとりやめ帰還する機会を当初より予定していたことを発表した。無論、異星の機械文明との初遭遇の機会を拒否した者はほんの一握りだけであった。

 タイタンのクロアキシアでは、サーグのもとを彼の兄で熱狂的な宗教者であるグルーアクが訪問し、異端審問官が彼を捕えにくることを伝え、異端の学説を翻し神に帰依するよう説得する。が、異端審問官より先に隣国であるカーソジアの兵が使者としてサーグの前に現れた。彼らはサーグをクロアキシアの暗冥から解放すべく訪れたのだと語り、彼の知識や思索をカーソジアの統治者であるクライパーが欲していることを告げる。

 探検隊では、タイタン上を無人機で調査させたところ、驚くべき事実が判明していた。そこには予想されていた異星人の姿は見当たらず、かわりに二足歩行の機械群が、まるで人間のようにふるまっている姿があったのだ。

 降下隊に加わることに成功したザンベンドルフ。一行は、地球の科学力を駆使して異端者狩の一団に追われるサーグたちを救出し、攻撃を加えてきた追手たちを一瞬で掃討する。驚愕する機械人たちは地球人の乗物をドラゴンと認識。さらにカメラ装置を神の目ととらえたサーグは、その神の目が彼の要請に応えて遥か高みに舞い上がり、世界を見下ろす光景を目撃する。ロフバイエルや彼の考えたとおり、世界は球形だったのだ。

 ザンベンドルフはその知識と経験を活かし、機械人とのコミュニケーションに早々と成果を上げたが、それを妬む一部の科学者たちの姦計により上空に待機する船に呼び戻されてしまう。

 カーソジアにたどりついたサーグはロフバイエルと再会し、クライパーが公明正大で国にはクロアキシアにはなかった秩序があふれていることを知る。

 地球側ではタイタンの工業力を利用してアメリカが一気にかつてない権力を掌握することを画策。ザンベンドルフの教育により対等の交流を要求し始めたカーソジアにかわり、神権主義政治で民衆を搾取するクロアキシアとの取引を決定する。神権階級を無力化し王権の傘下に貶めるため、ザンベンドルフに協力を要請するが、地球人とちがってタイタンの機械人たちが進取の気性に富み、大いなる発展を希求していることに感銘を受けた彼はその申し出を拒否するのだった。

異境

 政府を後ろ盾にした調査団幹部たちはクロアキシアに地球製の武器を与えた。圧迫された近隣諸国も対抗するためには地球人のいいなりになるしかない状況を創出するためであった。マッシーとザンベンドルフはそれを阻止するために手を結ぶが、有効な打開策もないままザンベンドルフは着陸船を強奪しカーソジアめざして降下する。が、手ちがいから荒地の山上にいったん着陸した彼らは、サーグの兄グルーアクと遭遇、問答を行うが、グルーアクの過剰な信仰心と翻訳機の不備がコミュニケーションに齟齬を来たし、グルーアクをして天啓を受けた<教化者>へと変貌させる。<教化者>は圧倒的なカリスマ性を発揮して最初に遭遇したクロアキシアの兵団を帰依させ、不戦と隣人愛を説く新しき信仰は燎原の火の如く一気に拡大した。武器はカーソジアに返還され、<教化者>はクロアキシアを目指す。状況を利用すべくザンベンドルフたちは教化者に民衆の前で“奇跡”を行わしめ、すべての機械人を教化すべく目論んだが、隊の責任者ラングの企みにより、降下船を<以下ネタバレにつき白字>撃破できる武器がクロアキシアの手にわたったと信じ込まされ、一行の命を危険にさらすことを回避するためザンベンドルフは断腸の思いで計画を放棄。<教化者>は奇跡を起こせぬままクロアキシアの権力者に捕縛されてしまう。

 <教化者>の処刑当日、ザンベンドルフはせめて溶解だけは免れないか検討し、ごく短時間であればクロアキシアに与えられた武装も降下船を撃墜する暇はないと推察、<教化者>の救出に成功する。だがその行為自体が、機械人たちにとって宗教的な奇跡の体現であり天意であると受け取られ、クロアキシアの権力者は追放され、企図せずして<教化者>の教義がタイタン全土を席巻する。隊上層部は同胞殺しを画策した罪を暴かれ更迭され、ザンベンドルフたちは降下船強奪等の罪を問われることなく迎え入れられ、カーソジアは
<以上ネタバレ>新しい時代への扉を開いたのであった。<以上あらすじ>



 いろいろな解説とか書評とか読んだ限りでは、なんとなくホーガンもハードSF系のひとってイメージがあるけど、前回読んだ『マルチプレックス・マン』にしても本作にしても、重いハードSFのイメージとは微妙にちがう、軽妙な読後感がある。もちろん、いい意味で。

 もっとも、ハードSFと冠されていても、オールタイムベストに出てくるような作家の作品はたいてい読みやすいし娯楽性も高いかもしれない。

 本書においては“筋の通った詐欺師”とでもいうべきザンベンドルフとそのご一行さまがきわめて魅力的で、犯罪まがいの行為をくりかえして世間をあざむくろくでなしどもが、どのひとりをとっても実はおそろしく才能や実力のある曲者ぞろいで、いざとなったら正義のために(っていうと語弊はかなりあるけど)一丸となって才能を発揮し難問をつぎつぎクリアしていき──とともに、中世的世界観のなかに生きる機械知性たちの世界でも某宗教のパロディとしか思えない痛快などんでん返しが仕込まれていて、読んでいて楽しいことこの上なし。まあ、そのぶん、というわけでもないけど、ザンベンドルフの素顔を世間にさらすために、科学者側から選ばれて探検に同道したマッシーたちは、幾分精彩に欠ける印象は否めない。別に活躍しなくても特に問題はないんだけど、こういう構成の場合はやはり、反目していた二勢力が共通の目的のために手をたずさえて邁進、てのが快進撃の王道だとは感じたので、マッシーたちが活躍らしい活躍を特にしないのは、やや画竜点睛を欠くきらい、なきにしもあらず。

 まあしかし、おもしろかったのはまちがいない。ホーガンが高名であるのも充分うなずける内容でありました。




 なお、この本を読んでいた時期にちょうど世間は選挙でかまびすしい状態でありました。偶然か運命か、それにからんで実に示唆に富んだ一文があったので、まあ時期はずれではありますが引用しておきます。

<引用開始>「その制度の問題点は、選挙で選ばれる基準が、まさしくその選出されるための技能だけにかかっているということだな……票を集める期間中だけ必要な数の人間をたぶらかしておく能力があれば、それですむわけだ」ザンベンドルフは憤懣やるかたない口調で、「不幸にして、公職に就くために必要な個人的素質は、当の公職が要求するそれと事実上正反対だ。不正行為によってのみ合格できる試験が、正直な人間を選び出せるはずはなかろう? まったくわかりきったことなのに、それでもなお──」<引用終了>(P.324)

 うん。まさしく。








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※この記事は2009-10-31 19:05:50にアメブロに投稿した記事を移転したものです。

なお、移転元の記事は削除済です。










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