読書録─『収容所惑星』A&Bストルガツキー | 無名戦士の黒い銃

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読書録─『収容所惑星』A&Bストルガツキー

読書録─『収容所惑星』A&Bストルガツキー



閉塞


 ストルガツキー兄弟の「マクシム・カンメラー」ものの第一作。

 三歩あるけばすべて忘れる鳥あたまの面目躍如、再読のはずが内容をほとんど覚えていなかった。

 ので、覚書としてあらすじをひとくさり。ネタバレしまくりなので、未読で読むつもりのあるひとは以下は読まないで下さい。





第一部


・冒頭、主人公のマクシムはろくでなしの調査員として自嘲的に登場する。自由調査団のメンバーで、いってみれば惑星調査員のようなものらしい。といっても、まともな人間なら自由調査団などには入らない。展望も能力もなにもないろくでなしの仕事が自由調査団のメンバーであるようだ。

・隕石のせいでとある惑星に不時着したマクシム。宇宙船は破壊され、脱出の望みはない。

・惑星は工業化されており、川には放射能。ぶあつい大気で星はみえず、地平線は上方に孤を描いているため住民は惑星という概念をもたず、むしろ球の内側にいると考えている。

・荒れ果て、汚染された道路を放射能をまきちらしながら走る自走車にいきあった後、マクシムは石造りの建物にいきつく。そこで赤毛の男・ゼフに出会う。

・憲兵のガイはゼフにつれられ事務所に現れたマクシムを目撃する。惑星の住民は言葉も通じずおかしなかっこうをしているマクシムを怪しむが、やがてガイとのあいだに友情が育まれることになる。

・収容された施設でことばを覚えはじめるマクシムを、ある日ファンクと名乗る男がつれだす。だが移動の途中、突然、街のひとびとが興奮して声をかぎりに歌いだし、そのいっぽうでファンクは車を運転したまま異様に苦しみだす。群集は狂ったように陽気に歌いながら車に殺到し、ついにそれを横倒しにしてしまう。

・そのまま街にさまよいだすマクシム。夜になり店に入って食事をしようとする。ラダという名の娘に会う。おどろいたことに、ラダはガイの姉であった。ラダの家に向かう途上、<奇形人>と呼ばれる危険な連中に遭遇するふたり。だがマクシムは複数の人間に囲まれながら、しごく簡単に彼らを撃退してしまう。外の世界では平凡な惑星調査員である彼も、医療も科学も発達していないこの孤立世界においては超人的な体力を発揮できるのだ。

・マクシムをとり逃がしたファンクを叱責する男が登場。<遍歴者>と呼ばれる(本書においてこの人物の個人名には一箇所を除いてまったく言及がないが、カンメラーものの第二作である『蟻塚の中のかぶと虫』において、地球人であるルドルフ・シコルスキーなる人物であることが語られる)。


第二部


・マクシムはガイのつてで憲兵隊の見習いとして活動していた。おどろくべきスピードで現地の言葉を覚え、超絶的な体力をほこるマクシム。ガイは彼と個人的に親しい間柄となっていたが、隊内においても気安く接しようとするマクシムに少なからず困惑させられる。

・惑星の歴史をさぐるマクシム。戦争の影響で無秩序が支配するに至ったとき、<紅蓮創造者>なる一団が世界を救った。だが北方にはホンチとパンデヤなる二大国家が存在し、南には<島帝国>なる実態不明の国家があり、ともに侵略の機会をうかがっている。ガイたち憲兵隊はその手先と戦っているようだ。<奇形人>とは彼らのことで、ときどきいっせいにひどい頭痛に苦しみだしたりするのがその特徴であるらしい。

・ガイたちと敵対する反政府組織は、国内に無数に佇立するミサイル迎撃システムタワーを破壊するため執拗に襲ってくる。

・憲兵隊は街に潜入した反政府組織のアジトを急襲し、マクシムは超人的な活躍をみせる。だが彼はこの惑星のひとびとが、ときどき突然発作にかかるように熱狂し、わめき、歌いだすことに違和感を感じる。

・捕虜の尋問に同席するマクシム。金のために破壊活動を請け負うどうしようもない連中が<奇形人>だと教えられていたが、実際に目の前にしてみれば彼らも自分とかわらぬふつうの人間であるとしか思えないことに疑問を膨らませる。帰宅後、ガイにそのことを質すが、論理的に説得してもガイは自説をまげようとはしない。

・マクシムが<奇形人>のスパイではないかと疑う大尉によって、<奇形人>の処刑を命じられるマクシム。だが当の奇形人から話をきいたマクシムは、自分たちがだまされていると知り、彼らを逃してしまう。憲兵隊と袂をわかつと宣言し、ガイをもさそうマクシム。だが大尉がマクシムに銃弾をうちこむ。何発も何発も、致命傷を負わせる。


第三部


・郊外にある反政府ゲリラの拠点にマクシムはいた。通常の人間であれば致命傷となるはずの銃撃を受けたにも関わらず、彼はぴんぴんしている。外世界において何らかの処置が一般的に施されており、非常に生命力が強くされているようだ。のみならず、マクシムは暗闇でもものが見えるし、治癒力を発揮することさえできる。<奇形人>たちを襲う頭痛をも軽減させるほどに。そして彼らの頭痛の原因は、なんと憲兵隊でミサイル迎撃システムといわれていたタワーから発される放射線によるものだという。反政府ゲリラたちの言によれば、タワーは<奇形人>なる差別者を生み出すための装置であり、圧政の象徴だというのだ。

・タワー襲撃は無意味であることを主張するマクシム。制御センターを破壊しなければ人命のむだだし、いまだかつてタワーが破壊されたためしもない。どうしても襲撃するのであれば自分ひとりでできると訴えるがきき入れる者はなく、しかたなしに襲撃作戦に参加する。だがタワーの破壊には成功したものの、作戦参加者たちの大部分は恐れていたとおり犬死にとなり、マクシムもまた行き場を失う。

・ラダのもとを訪れるマクシム。ガイにことの真相を説明するが、やはり信じてはもらえず、逆に<奇形人>とは手を切れと説得される。だがガイの家は見はられていて、ラダを人質にとられたためにあえなくマクシムは捕らえられてしまう。

・<賢者>と呼称される検事のところへ、<遍歴者>が現れ(彼らは<紅蓮創造者>の構成員なのか? いずれにしろ国内で非常に高い地位にいるらしい)、マクシムの引渡しを要求する。しぶしぶ了承する検事だが、護送中に行方を絶ったと偽る。


第四部


・マクシムはゼフ、および<イノシシ>とともに軍事行動に従事している。ゼフは最初に憲兵隊へとマクシムを連行した男だが、どうやら反政府組織とも関係があるらしい。<イノシシ>はゲリラのアジト襲撃の際の捕虜のひとりだったはずだが、<紅蓮創造者>側の兵士として動いているのか? どうもよくわからない。<イノシシ>から任務を与えられるが、マクシムは状況がわからないまま命令に盲従することを拒否する。そこで<イノシシ>とゼフは、恐るべき真実を語りはじめる。タワーから照射される放射線は、奇形人を対象にしたものではないというのだ。つまるところそれは、浴びたものの脳に現実に対する批判的分析能力を失わせてしまうものなのだという。すなわち思考のかわりに盲信をもたらし、吹きこまれたことを輝かしい唯一の真理であると心底から思いこませ、努力し、死ぬ覚悟までさせるものであるのだ。そして生理的に暗示にかからないひとびとこそ、奇形人と呼ばれる連中なのだ。このシステムを牛耳る<紅蓮創造者>たちを追い落とすには、タワーを個別に襲撃しても無意味でセンターの機能を停止させるしかないが、当然のことながらセンターの所在は極秘中の極秘で、破壊できる望みはない。

・マクシムは打開策を模索して<イノシシ>たちから離れ、南をめざす。強奪した戦車を操縦していたのは、なんとガイであった。マクシムの主張を信じないガイに、タワーの放射線が届かない場所まで連れ出して証明しようとするマクシム。だがガイは麻薬の禁断症状のように生気をなくし、意識を喪失してしまう。マクシムがサイコマッサージをほどこすことで一命をとりとめるガイ。

・南部の森でミュータントの一団と接触するふたり。だがミュータントたちは極端に虚弱で、マクシムの構想どおり<紅蓮創造者>たちを打倒する助力を期待することはできそうにない。焦るマクシムは、砂漠の野蛮人と<紅蓮創造者>たちとを戦わせる手段を考えるが、そのためには蛮人に森を通過させる許可を与えなければならない。ミュータントたちは<紅蓮創造者>のかわりに砂漠の民が彼らを支配し、あるいは駆逐することを恐れた。そして<妖術使い>と呼ばれるきわめて知性的な人物がマクシムをいさめる。個人的な良心を満足させるために世界のバランスを崩そうとしているマクシムの行為には益がないと。そのとおりであることをマクシムも認め、島帝国との接触を模索する。

・飛行機を贈られ、島帝国をめざすマクシムとガイ。ところが放射線の影響範囲に入ると、ガイはマクシムを崇拝し熱狂しはじめる。そしてミサイル基地からの攻撃を受けて墜落してしまう。その先で廃棄された潜水艦を発見するふたり。内部を確認すると、島帝国の人間がミュータントたちにおそるべき拷問を行っているアルバムを発見する。島帝国との接触をあきらめ、奇形人たちにさらわれた自分をガイが救出したことにして、<紅蓮創造者>たちの国へ戻ることを決意するマクシム。

・遍歴者はラダを抑え、マクシムを自分の管理下におくことを考える。彼はマクシムが非常に危険な人物であると考えているらしい……。

・情勢はホンチとの戦争へと突入する。ゼフ、ガイたちとともに戦争にかりだされるマクシム。<遍歴者>の命を受けたファンクがマクシムを連れ出しにくるが、ガイたちと一緒でなければいくことはできないとつっぱねてしまう。混戦にまきこまれ、ガイは銃弾に倒れる。


第五部


・<遍歴者>の研究所に所属するマクシムを保身のために利用しようと、視察を装い検事が訪れる。まんまとマクシムとの会見をとりつけることに成功した検事は、自宅に招いたマクシムにセンターの占領を提案する。彼はセンターの所在を知っていたのだ。そしてマクシムにならその破壊が可能だと考えている。

・準備が充分に整わないまま、襲撃を決行する必要に迫られるマクシム。数々の障害をのりこえ、センター中枢にたどりつくと、憂鬱線を照射しはじめる。これを受けた人間は気力を喪失しものの役に立たなくなるのだ。時限爆弾を設置し、黒幕とおぼしき<遍歴者>との対決に向かうマクシム。だが、センターが破壊されたのを目のあたりにした<遍歴者>が口にしたのは、<以下ネタバレ>現地語ではなくこの世界では話すもののいないはずのドイツ語であった。

・<遍歴者>の口から真相が語られる。彼は銀河系保安局の職員で、五年前からこの不幸な惑星を救済するために潜入し、あらゆる結果を考慮して準備を進めていたのだという。ところがそこにマクシムが現れ、考えなしに五年ごしの彼の計画を一瞬にして崩壊させてしまった。超人的な活躍でひとびとを圧政から開放すべく展開してきたマクシムの活動は、すべていきあたりばったりの近視眼的な行動であり、そのために五年前から慎重に進められてきた遍歴者の計画はずたずたに引き裂かれてしまったのだという皮肉な結末で
<以上ネタバレ>物語は幕を閉じる。






読後の感想


 冒頭ではドロップアウターと等しいとさえ思われる「自由調査員」として登場したマクシムだが、物語中の大半では超絶的な体力と知力をほこる超人として大活躍をみせる。行動は冒険活劇的だが爽快感はいっさいなく、全体に陰鬱で閉塞感がみちあふれている。最後の最後に、住民たちの<以下ネタバレ>自由とほこりのために闘っていたマクシムの活動が、より大きな計画を台無しにしてしまうだけの思慮たらずな愚挙<以上ネタバレ>でしかなかったことが明かされることも読後感をいっそう悪いものにしている。

 ストルガツキー兄弟の作品は全体に好印象がつよいが、本書だけはやはり気にいらない、ということを再認識させられた再読であった。

 もともと本書は、そのタイトルの芸のなさのせいか文庫化時に購入していなかったため、第二作の『蟻塚の中のかぶと虫』から読んだように記憶している。『収容所惑星』が、後の二作に比べてあまり高い評価を受けていないことはなんとなく知っていたし、この作品を読まずとも残りの二作の読解に支障はないという解説も第二作に付されてはいたのだが、やはり三部作と称されているのにその第一作を読んでいないことがひっかかっていたのでかなり苦労して本書を入手した記憶があるが、苦労に見合わない読後感ではあった。

 まあ気に入った作家の作品はできるだけ蒐集したい性癖があるので、その点では意味があったといえなくもない。





 で、ネットで調べてみてびっくり。この『収容所惑星』(原題:有人島)を原作とする映画が二部作でつくられてたんだって! 第一部は去年の12月に公開されてて、第二部も今年には公開予定なんだとか。ロシア映画みたいだし、日本で公開されるのか(あるいはされたのか)どうか。

 ウェブサイトにいってみたけど、なんだかかっこよさそうだよ。怪物みたいなのは、ビッグ・ヘッドかな。なんか脳みそむきだしの解剖シーンみたいなスチルもあるよ。いったいどういう話になっているんだろう。サイトをみる限り、期待もてそう。でもロシア映画だからなあ。こないんじゃないかなあ、日本には。観たい。観たいなあ……。


Amazonリンク↓

『収容所惑星』




※文中の画像は楽天・Amazon等へのアフィリエイトリンクが含まれます。
※この記事は2009年02月02日 23時04分33秒 にアメブロに投稿した記事を転載したものです。
 またこちらへの転載に伴い、アメブロおよびBloggerのミラーサイトに掲載した元記事は削除いたしました。
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