読書録─『蟻塚の中のかぶと虫』A&Bストルガツキー | 無名戦士の黒い銃

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読書録─『蟻塚の中のかぶと虫』A&Bストルガツキー

読書録─『蟻塚の中のかぶと虫』A&Bストルガツキー



獲物



 例によってネタバレにつき、未読の場合は注意されたし。

 ストルガツキー兄弟の「マクシム・カンメラー」ものの第二作。

 まず第一に、本書を理解するにあたって<遍歴者>という用語について注意すべきであることをここに明記しておく。

 なぜかというと。

 第一作において、<遍歴者>はルドルフ・シコルスキーの通称であった。で、第二作である本書においても<遍歴者>がでてくるのだが、これはなぜかシコルスキーではない。それどころか、本書においてはシコルスキーはむしろ<遍歴者>に対立する立場として描かれている。

 本書における<遍歴者>とは、ひとことでいってしまえば人類やほかの文明種族にひそかに接触をはかっていると思われる謎の存在のこと。本書におけるシコルスキーは、その謎の存在の干渉が人類に危険を及ぼす可能性を慮るあまり、その影響力を極力排除するべく立ちまわる役まわりを担っている。前作で<遍歴者>と呼称されていた人物が、である。

 ふたつの作品において同じ<遍歴者>という言葉が、共通点なきにしもあらずとはいえまったく別の使いかたをされているわけである。はっきりいって、作者の意図がまったく不明。読者を混乱させる効果しかないとしか思えないのだが、いったいなぜこうもわかりにくい用語の使いかたをしたというのか。まったく意味がわからない。

 とはいえ、この部分にさえ惑わされなければ、この第二作は非常に明快なプロットである。 以下、恒例あらすじの覚書。かなり長文。もちろんネタバレ注意。






・マクシム・カンメラーは、いまは上司となったルドルフ・シコルスキーからある任務を与えられる。行方をくらましたレフ・アバルキンなる人物の捜索である。プログレッサー(進歩官)であるアバルキンは惑星サラクシ(第一作における“収容所惑星”のことらしい)から地球へ帰還したはずだが、出頭せず姿を隠したのである。マクシムの任務はアバルキンを発見し監視下に置き報告をすること。接触は禁止で自分の身分も偽らなくてはならない(現在マクシムはコムコン2という特殊部署に所属しているらしい)。

・資料によるとアバルキンはサラクシにおいて潜入作戦に従事していたが正体が発覚、トリスタンなるアバルキンの観察医は防諜機関員の手で殺害され、アバルキンはかれの遺体の収容にも失敗。精神障害寸前の状態で地球への帰還を要請し聞き入れられるも、行方をくらましてしまったのであった。

・プログレッサーに関して明確な説明は見あたらない。マクシムの独白によると、マクシム自身が最初のプログレッサーの一人だったといえなくもないということらしいが詳細はよくわからない。第三作のラストあたりで、プログレッサーとは<進歩のバックアップ>をする地球人のことだという言及がある。第一作のシコルスキーの立場が一番近いようだが、プログレッサーと呼ばれたのはアバルキンが最初らしい……。どうも混乱する。

・アバルキンの経歴をみて、マクシムはかつて実習生としてアバルキンがかれのもとにいたことがあることに思い当たる。アバルキンは惑星サラクシにおいて<ビッグ・ヘッド>と呼ばれる種族と接触した初期の人間であるらしい。その後アバルキンは数々の作戦にプログレッサーとして従事するも、幾度となく再教育を受けさせられている。

・シコルスキーから受け取った資料の大部分はアバルキンの報告書からなり、とりわけ惑星<希望>での<死せる世界>作戦に参加したときの報告書がマクシムの目をひく。このあたりで謎の存在であるほうの<遍歴者>に言及がなされる。<希望>では技術発展の暴走のために惑星が汚染され、人類は遺伝病に冒されて滅亡寸前になっていた。そこへ<遍歴者>が介入し、<希望>の住人の大部分を宇宙空間トンネルを通していずこかへ連れ出したのだという。救出されたものと目されてはいるが、連れ出された数十億のひとびとがどこへいきどうなったのかはわかっていない。

・<死せる世界>作戦においてアバルキンはビッグ・ヘッドのシチェクンという者と行動をともにしていた。

・またもうひとつの報告書では、ギガンタという名の惑星で、コルネイ・ヤシマアという人物のためにアバルキンが就職の斡旋をしている。

・アバルキンはビッグヘッドとの共同作業をつよく希望していたが、ある作戦の縮小を境に望まぬ任地への派遣を命ぜられつづけ、希望がいれられることはなかった。

・マクシムはアバルキンが連絡をとりそうなところをリストアップする。その過程で、アバルキンには普通の意味での両親が存在しないことを確認する。かれの父母は受精卵を生命研究所に残してブラックホールに突入してしまい、帰還不能となってしまったのだ。かれらが戻らないことが判明した時点で受精卵は活性化され、レフ・アバルキンが誕生したという。

・アバルキンが接触しそうな人物としてマクシムは少年時代のアバルキンの教師であるフェドセーエフを訪ねる。だがアバルキンは彼の前には姿を現してはいない。ここでビッグ・ヘッドに関する描写が初めて物語中にあらわれる。それによるとかれらは知性をもった犬型の種族で、でかい頭をしているからビッグ・ヘッド。レフ・アバルキンはビッグ・ヘッドの研究でかつて大成功をおさめたのだとフェドセーエフに説明するマクシム。

・少年時代のアバルキンは他人との接触をきらい、動物ばかりをかわいがっていたらしい。フェドセーエフからアバルキンの接触しそうな人物として、マイヤ・グルーモワなる女性の名があげられる。

・つぎにマクシムは全寮制学校の監察医であるレカノワにヴィデオフォンをかけるが、よい反応は得られなかった。シコルスキーはレカノワへの接触は無意味だとマクシムに告げ、マイヤ・グルーモワへの接触を命じる。

・ここでアバルキン自身の手になる<死せる世界>作戦の報告書の抜粋が挿入される。ビッグ・ヘッドのシチェクンと作戦行動をともにするアバルキン。なにかを探索しているのだが、なにを探索しているのかは詳らかではない。

・マイヤ・グルーモワに接触すべく<地球外文化博物館>を訪ねるマクシム。マイヤはアバルキンとの不幸な想い出を泣きながら語りはじめる。アバルキンに愛されたただひとりの人物であり、同時にアバルキンの所有物でもあったのだと。やがてマイヤは自由を夢みるようになり、アバルキンと疎遠になってしまった。どうやらグルーモワは、マクシムが<死せる世界>作戦の報告書に目をとおしていた時点で、アバルキンと接触していたらしい。

・警戒するマイヤから言葉たくみにアバルキンの行き先をききだすマクシム。湖畔の保養地にとぶが、アバルキンの姿はない。どうやらマイヤとアバルキンはそこで接触していたようだ。

・シコルスキーに報告するマクシム。シコルスキーはアバルキンが再度マイヤに接触すると考え、再度グルーモワにあたることを執拗に命ずるが、自分の身分を隠さずに再接触することは困難であることをマクシムはうったえる。シコルスキーはこたえず、博物館を訪問した理由をなにげなく問うた。マイヤの勤務先が博物館であることを伝えたとき、シコルスキーは激烈な反応をする。どうやらマイヤが博物館の人間であることが思いがけなかったらしい。そして自ら、彼女の部署である<用途不明物品特別部>の名称を口にする。シコルスキーはとつぜんマクシムに帰還命令をだす。自宅待機を申しつけ、夜になってから呼び出しがかかるだろうことを示唆。

・再び<死せる世界>作戦の報告書の抜粋。行動中に、ふいにビッグ・ヘッドのシチェクンが、地球人には見えない<穴>があるといいだす。<穴>には<底>がないと恐怖するシチェクン。空間トンネルの発見。トンネルは地球人のようなものたちからは見えないように隠蔽されているのだとシチェクンはいう。トンネルをとおして惑星の住民はつれだされたのだと考えられる。連れ出したのはおそらく<遍歴者>。ここでアバルキンによる<遍歴者>の説明が入る。超文明で、人類よりはるかに強く、おそらくヒューマノイドではない。かなり以前から銀河系を完全に牛耳っているふしがある。地球人のことばで言うところの<故郷>がないらしいため、かれらは<遍歴者>と呼ばれる……。アバルキンは<遍歴者>と遭遇などしないほうがいいと思っていると述懐する。

・待機中のマクシムにヴィデオフォン、相手はなんとレフ・アバルキン。翌10時に湖畔の保養地でおちあう約束を交わす。シコルスキーへの報告の際、アバルキンはかれにも接触をはかったことが発覚。マクシムにかけてきたときのように映像をうつさないヴィデオフォンがシコルスキーにもかけられ、無言のまま切られたという。しかもその番号はひとりを除いてだれも知らないはずの番号であると。

・シチェクンおよびヤシマアについて情報を検索するマクシム。おどろくべき事実が判明する。コルネイ・ヤシマアは、アバルキンと同様両親の死後に生まれた遺児であること、そしてアバルキンと同年同月同日に生まれていたこと。

・みたび<死せる世界>作戦の報告書。アバルキンとシチェクンは両親をさがしてある目的地へと向かう兄弟にであう。子どもたちが目指している場所は偶然にもアバルキンたちの目的地とおなじであるらしい。たどりついた先で遭遇した老人が、かれらの世界を襲った災厄について語りはじめる。惑星の地底から現れた非人類種族が四十年前に未知の疫病をばらまくことで災厄は始まった。子どもたちは急速に老けこんでいき、十八歳で老化が始まる。二十歳まで生きのびる者はほとんどいない。疫病が猛威をふるった三年後に、非人類は姿をあらわし、地底のかれらの世界へ住民を移動させれば病気は自然に消滅すると告げる。そして地の底へ殺到したひとびとはだれ一人戻らなかった。残されたひとびとの前に、子どもをさらう「人間のイミテーション」があらわれる。文明は滅亡し、残されたひとびとに絶望が蔓延する。老人はアバルキンたちを地底からきた非人類の手先と非難し、発砲が始まる……。

・シコルスキーから再び命令が下る。アバルキンに会う前にマイヤ・グルーモワにいくつかのことを確認せよと。博物館にヴィデオフォンをかけたマクシムは、シコルスキーが派遣したとおぼしき部下がでたのにおどろく。十重二十重の手を打っているシコルスキー。グルーモワは出勤していないと部下は告げる。つづいて10時の約束を確認する口実で湖畔の保養地で待つはずのアバルキンにヴィデオフォンをかけると、応答したのはマイヤ・グルーモワだった。アバルキンが自分ともグルーモワとも会うつもりのないことを察しながらマクシムは湖畔のグルーモワのもとへ訪れ、アバルキンとどういう会話を交わしたのかを問いただす。だがアバルキンはただグルーモワに、少年時代の彼との思い出を語るよう一方的に強制しただけだという。まるでなにかを確かめるかのように……。アバルキンは自分の人生について、あるいは自分の運命について、何かを知りたがっているのか。彼自身には隠された何かを。

・シコルスキーに報告し、シチェクンおよびヤシマアと接触するつもりでいることを告げるマクシム。当初は却下したシコルスキーもマクシムの説得で訪問を承諾する。だがヤシマアは惑星ギガンタにいるらしい。

・領事として地球に滞在するシチェクンのもとを訪れるマクシム。異種族であるビッグ・ヘッドとのコミュニケーションははかどらなかったが、なにげなく発した質問がシチェクンから意外な反応をひきだす。アバルキンのほかにも地球人と働いたことがあるというシチェクンに「違いは感じなかったか」と問うと、あきらかにビッグ・ヘッドは狼狽したのだ。そしてさらに続けられたかみ合わない問答のあいだに、アバルキンがシチェクンのもとを訪れ匿ってと頼んだらしいことを引き出す。アバルキンの問題は地球人の問題でありビッグ・ヘッドは関与していない、ともシチェクンは告げる。アバルキンがシチェクンにどんな話をしたのかと問いただすマクシムに、ビッグ・ヘッドはこたえる。さきほどマクシムがしたのとまったく同じ質問、アバルキンと、ほかの人間とのあいだに違いはあるかという質問をしてきたのだと。

・マクシムの報告に満悦するシコルスキー。だがなにがかれを満足させたのかマクシムにはわからない。

・待機ののち、真夜中に地球外文化博物館へと呼びだされるマクシム。シコルスキーはある品物を狙ってアバルキンがそこに現れると考えているらしい。だがやってきたのは、シコルスキーの長年の政敵であるブロンベルグだった。ふたりの老人はいい争いをはじめる。博物館の学術評議員であるブロンベルグがなぜか館内に入ることを禁じられてしまったのだ。その原因がシコルスキーにあるとブロンベルグは考えているらしい。延々と争いあったあげく、不意に黙りこむふたり。そしてブロンベルグが真夜中の博物館へひそかに訪れたのは、「雷管」と呼ばれる物体を確認するためだったとマクシムは知る。

・いいあいに疲れたブロンベルグから、偽名でアバルキンが接触してきたことをききだすシコルスキー。ブロンベルグはかれの肘の関節に奇妙な痣があることに気づき興味を抱く。キリル文字に似たその痣をブロンベルグは最初、刺青ではないかと考えた。そしてふと、その痣とそっくりそのまま同じものが「雷管」に刻まれていたことを思い出す。それを確認するために、ブロンベルグは入館を禁じられた博物館へ真夜中に訪れたということらしい。「雷管」をブロンベルグに検分させるシコルスキー。老人は、アバルキンの痣と雷管の文字とがまったく同一であることを確認し、シコルスキーがアバルキンに刺青を入れさせたのではないかと問う。が、シコルスキーは否定する。あの痣はアバルキンが十歳から十二歳になるころに現れてきたのだと。

・ブロンベルグがアバルキンとの会見について語る。偽名を名乗ったアバルキンは、自分が一、二歳のころに、禁じられた科学に関連して失踪した両親について、その分野で最高の権威者であるブロンベルグがなにか知っているのではないかと訪れてきたのだという。むろん、偽名である以上なにも見つかるはずはなかったが、彼の生年前後に科学上不思議な事件が起こり、公表を禁じられた事件がなかったかどうか調べてみると八件の異なった事件が出てきた。そのうちの一件が、「雷管」にまつわるものであった。

・「雷管」は<以下ネタバレ><遍歴者>にまつわる遺物であった。<遍歴者>の廃墟から発見された「石棺」との通称の遺物は、驚くべきことに一種の胎児金庫であることが判明したのである。内部には十三個のホモ・サピエンスの受精卵細胞が潜伏状態でおさめられ、完全に生活能力があることも確認された。秘密裏に会議が招集される。<遍歴者>が「石棺」を遺した意図はまったくわからない。非ヒューマノイドと一般的に考えられているが、かれらが遺伝学上、人類と双子のようによく似ている可能性もあるという。「石棺」を破壊すべきか、それとも胎児を活性化させるかで意見がわかれるが、シコルスキーは遺物が人類文明に潜入するための、一種の破壊分子である可能性を考えて封印すべきであることを主張する。受精卵は解剖学的にも生理学的にも人間とまったくちがわない。成長させたとしても、自分が異文明のプログラムとは知らぬまま、何か人類にとって壊滅的な行動を起こさないとは限らないと。だが結論が出ないまま、ついに卵細胞は十三個ともすべて、分裂を開始してしまう。

・<捨て子>たちをどうすべきか討論がなされ、かれらのだれにも出生の状況を知らせることなく、出生後ただちに地球外へ分散され、以後たがいに会うことのないよう処置を講ずることとなる。

・その決定がなされた数日後、異星人であるタゴール人の仕事仲間がシコルスキーを訪ねてくる。どこからか、胎児金庫のうわさをききつけてきたらしい彼はおどろくべき話を始める。地球時間で百五十年ほど前、タゴール人はある場所で飼育機を発見した。二百三体の潜伏状態にあるタゴール人が入っていたその機械装置は、タゴール人が発達段階にあったはるか昔に設置されたもので、間違いなく<遍歴者>の企みだとかれらは考えているという。そして人類の胎児金庫の場合と同様、幼虫はひとりでに成長をはじめ、タゴール人は躊躇なく中身ごと機械を破壊したのだ。タゴール人の仕事仲間は、地球人が胎児金庫をどうしたかをさぐりに訪れたらしく、破壊されていないと察するや、人類版図からいっせいにタゴール人が立ち去りはじめ、タゴールで働いていた地球人も一人残らず引き上げざるを得なくさせられ、その後二十五年間タゴールと人類との関係は断絶することになった。

・アバルキンとその他の十二人は全員同じ日に出生し、プログラムにしたがって定められた人生を送り始めた。だがある日、アバルキンの肘に文字に似た痣が現れる。その後十三人全員がそれぞれ特有の文字に似た痣を発現させた。そして<遍歴者の烙印>と呼ばれることになるその痣とおなじ文字が、胎児金庫の部品にも刻まれていることが判明する。そして「雷管」のひとつが実験によって分解され、もとどおりにならなくなったことがわかったとき──その雷管に刻まれた文字と同じ形の痣を持つ<捨て子>が事故にまきこまれて死亡してしまう……。

・同時に、シコルスキーが知らぬところで<捨て子>のひとり──コルネイ・ヤシマアに、出生にまつわる真相が打ち明けられていた。ヤシマアは事実を冷静にうけとめ、自分に潜在的危険があることを認めつつもそんなことはまったく信じていないと述懐する。自己観察にもすすんで応じ、深層精神分析を行うよう自から申し出た。ヤシマアの実験の成功に気をよくした心理学者たちは、ふたりめを選抜する。ところがその<捨て子>は四ヵ月後に死亡してしまう。自殺の可能性も排除できない状況で。そして数日後、死亡した<捨て子>に照応する「雷管」が消失してしまったことが確認された。

・以上の事実をマクシムに語ったシコルスキー。サラクシで死亡した医師のトリスタンは、実はアバルキンが人間のままでいるかどうかを確かめるための観察医であった。そのトリスタンの最後を目撃したのは、地球に到着した直後に失踪した当のアバルキンただひとり。そしてシコルスキーの特別チャンネルのナンバーを知っていたのはトリスタンだけ。シコルスキーは、アバルキンを<遍歴者>にあやつられたロボットであると断定する。プログラムが発動してアバルキンはトリスタンを殺害し、姿を隠したのであると。ほかの十二人は正常値の範囲内にいるが、最初に痣が現れたのはアバルキンだったのだ……。

・マクシムは、アバルキンの行動が、自分が何者であるかを確認する作業であったことに思い当たり、かれに危険はないと主張する。シコルスキーは立場上、それを容認することはできない。そしてついにアバルキンがふたりの前に姿を現す。

・自分の出生の秘密を知ったと告げるアバルキンは、地球を離れるつもりはなく監視されるのも耐えられないと告げ、これからは好きなように暮らすと宣言する。マクシムの推測どおり、アバルキンは自分が地球人である証拠を探しまわっていたのだ。地球に住むことを禁じられているのはアンドロイドだけだからだ。アバルキンは、そっとしておいてくれと告げ、ふたりの前を立ち去る。

・追跡を命じられたマクシムは、命令に背き、アバルキンに逃走を促す。だがアバルキンはきく耳もたず、マクシムを気絶させて博物館へ向かう。意識をとり戻したマクシムがあとを追うが、時すでに遅く、雷管を前にしてアバルキンは息絶える。シコルスキーの銃撃を受け、<以上ネタバレ>
マイヤ・グルーモワの目の前で……。





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 私が時間を割いてながながと、だれの役にも立たなさそうな“あらすじ書き”を始めたのは、以前にも書いたとおり一度や二度読んだだけでは物語の内容をすっかり忘れてしまうことに加えて、その物語を消化しきれていない、と感じていることに拠るところも大きいだろう。

 本書も再読、いや、おそらくは三読めくらいのはずだが、内容はすっかり忘れていた。だが冒頭に書いた<遍歴者>をめぐる混乱さえクリアしてしまえば、非常に明確でわかりやすいプロットであることに気づけた。しかも充分に物語を楽しめたのだから、非常に意味ある再読といえる。

 最後のどんでん返しも印象に残ったし、おわりかた自体も非常に味わい深く、読後感も(私的には)非常によい。

 私がストルガツキーの物語に魅かれるおおきな要素のひとつとして、そのタイトルの含蓄をあげることができる。本書『蟻塚の中のかぶと虫』も物語の内容を非常に味わい深くいい表している。すなわち物語の終盤でシコルスキーがマクシムに語るセリフ──「賢い大男が、まったくの科学的好奇心から<以下ネタバレ>蟻塚の中へかぶと虫をを追いこみ、蟻の心理のあらゆる微妙な動き、かれらの社会組織のあらゆる細部をえらく熱心に記録にとっている。そら、蟻がびっくり仰天しているぞ、そら、蟻が右往左往しているぞ。耐え忍び我慢して、祖国(ありづか)のために命を捧げる覚悟でいる。だから、哀れにも連中は、結局はかぶと虫が蟻塚から這いだしゆっくりと歩み去り、だれになんの害も及ぼさないなどとは夢想だにしていない……」

 だが<遍歴者>の意図はだれにもわからない。シコルスキーは続ける。「だが、もしこれが<蟻塚のかぶと虫>でなかったら? もしこれが<鶏小屋の鼬(いたち)>だったら?」
<以上ネタバレ>

 つぎの第三作において、はたして<遍歴者>の意図は暴かれるのか……?






 映画『有人島』だけど、タイトルは第一作のものだけど、登場人物らしき記述には、マクシムはもちろんのことアバルキンやゴルボフスキー、コモフの名前なんかも出ているみたいだよ。もちろんシコルスキーも。英語だからちと読む気にならないけど、ますますますます観たいなあ……。





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※文中の画像は楽天・Amazon等へのアフィリエイトリンクが含まれます。
※この記事は2009年02月03日 23時07分11秒 にアメブロに投稿した記事を転載したものです。
 またこちらへの転載に伴い、アメブロおよびBloggerのミラーサイトに掲載した元記事は削除いたしました。
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